DX推進の加速、セキュリティ要件の高度化などの背景から、多くの企業がハイブリッドクラウドへの移行を検討しています。それに伴い、インフラエンジニアには従来以上に専門性の高いスキルが求められるようになりました。
この記事では、注目を集めているハイブリッドクラウド市場の最新動向と、インフラエンジニアがキャリアの可能性を広げるために習得すべきクラウド関連スキルを紹介します。
目次
1. ハイブリッドクラウドのニーズが高まっている理由
1-1.2032年までの市場規模と導入の背景
1-2.企業がハイブリッドクラウドを導入するメリット
2. ハイブリッド時代のインフラエンジニアに必要なクラウド関連スキル
2-1.クラウドプラットフォームの知識
2-2.インフラ自動化ツールのスキルとプログラミング
2-3.最新のセキュリティ技術のキャッチアップ
2-4.包括的なシステムアーキテクチャの設計能力
3.最先端のハイブリッドクラウドを実務で学べる「日比谷情報システム」
ハイブリッドクラウドのニーズが高まっている理由
ハイブリッドクラウドについて、あらためておさらいしておきましょう。パブリッククラウドとプライベートクラウド(またはオンプレミス環境)を組み合わせて利用する運用形態で、2つの環境を統合してひとつのシステムとして運用し、必要に応じてデータやアプリケーションを相互にシフトできるという特徴があります。
ここからは、近年ハイブリッドクラウドのニーズが高まっている理由を解説します。
2032年までの市場規模と導入の背景
ハイブリッドクラウドの市場は拡大を続ける見込みです。グローバルインフォメーション社の調査によれば、2024~2032年の世界のハイブリッドクラウド市場の成長率(CAGR)は17.5%と予測されています。
成長の背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進、リモートワーク普及、セキュリティ要件の高度化などがあります。ただし金融や医療、製造業においては規制要件やセキュリティポリシーの関係で、すべてのデータをパブリッククラウドへ移行できないケースも少なくありません。
DX推進とセキュリティという要件を両立したい企業が増えていることから、今後ハイブリッドクラウドのニーズはさらに高まると見込まれています。
企業がハイブリッドクラウドを導入するメリット
企業がハイブリッドクラウドを導入する主なメリットとして、以下が挙げられます。
セキュリティ強化
機密性の高いデータや基幹システムをプライベートクラウドやオンプレミスに配し、厳格なセキュリティを維持する一方で、外部向けサービスやテスト環境はパブリッククラウドで運用するなど、セキュリティポリシーに応じた柔軟な配置が可能です。
リスク分散(BCP対策)
複数の環境に分散配置することで、障害リスクを軽減できるようになります。プライベートクラウドで障害が発生しても、パブリッククラウド側のバックアップやフェイルオーバーで事業への影響を最小限に抑えられます。
システムの拡張性向上
平常時はプライベートクラウドで運用し、トラフィック急増時にはパブリッククラウドにワークロードを移行することで、コストを抑えながら性能の要件を満たせます。
コストの最適化
自社システムの固定費とパブリッククラウドの変動費を組み合わせ、コストの最適化が可能です。常時稼働するシステムはプライベートクラウド、一時的な大量処理や開発・テスト環境はパブリッククラウドなどと使い分けができます。
上記のメリットは、いずれも企業のDX推進を大きく後押しする要素といえるでしょう。
ハイブリッド時代のインフラエンジニアに必要なクラウド関連スキル
企業のDX推進ニーズ増加に伴い、複数の環境を統合運用できるインフラエンジニアの需要が急速に高まっています。特に、オンプレミスとクラウドの特性を理解し、顧客の要件に最適なクラウド戦略を提案できるインフラエンジニアは、プロジェクトに欠かせない存在となるでしょう。
ここでは、ハイブリッド時代のインフラエンジニアが、キャリアの幅を広げるために習得すべきクラウド関連スキルを紹介します。
1.クラウドプラットフォームの知識
複数のクラウド環境を適切に組み合わせるには、各クラウドプラットフォームの特性理解が不可欠です。具体的には、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の特徴とサービス内容、料金体系を把握し、適切なサービス選択ができる知識が求められます。
オンプレミス環境やプライベートクラウドの技術(VMware vSphere、OpenStackなど)も習得する必要があります。オンプレミス環境とクラウドの連携設計ができれば、既存システムと新しいクラウド環境の最適なアーキテクチャの設計が可能になります。
2.インフラ自動化ツールのスキルとプログラミング
ハイブリッドクラウド環境では、複数の環境にまたがるインフラの構築や運用を効率的に行うための自動化が不可欠です。環境に応じてAnsibleやTerraform、CloudFormation(AWS)、Azure Resource Manager(Azure)などを習得すると仕事の幅が広がります。
また、反復作業の自動化や監視スクリプトの作成、APIを活用したクラウドリソース管理では、Python、PowerShell、Bashなどのスクリプト言語によるプログラミング能力が必要です。これらの技術を組み合わせれば、運用業務を効率化でき、より複雑な自動化やカスタマイズも可能です。
現代のインフラエンジニアは「手作業での設定」から「コードによる自動化」への転換が求められています。
3.最新のセキュリティ技術のキャッチアップ
ハイブリッドクラウド環境では、複数環境間でのセキュリティ統制が必要となり、包括的なセキュリティ対策が求められます。日々進化する脅威からネットワークやシステムを守るため、以下の最新セキュリティ技術を学び、ハイブリッドクラウド環境全体のセキュリティを設計・実装できる能力を身に着けましょう。
ゼロトラストセキュリティ
すべてのアクセスを信頼せず常に検証(多要素認証、最小権限の原則など)
IDaaS(Identity as a Service)
クラウドベースのID管理サービスで複数クラウド環境での一貫した認証・認可を実現(Okta、Azure Active Directoryなど)
CSPM(Cloud Security Posture Management)
クラウド環境の設定ミスや脆弱性を自動的に検出・可視化(Prisma Cloud、Laceworkなど)
WAF(Web Application Firewall)
Webアプリケーションの脆弱性を悪用する攻撃を検知、遮断
データ暗号化技術
データを第三者に解読できない形式に変換
4.包括的なシステムアーキテクチャの設計能力
ハイブリッドクラウドでは、すべての環境がシームレスに連携するので、最適なパフォーマンスを発揮するアーキテクチャの設計能力が求められます。
要件定義
顧客のビジネス要件、非機能要件(性能、可用性、保守性など)を正確にヒアリングし、ハイブリッドクラウドに落とし込む能力
ネットワーク設計
遅延や帯域幅を考慮し、各クラウド環境間のVPNや専用線接続、VPC/VNetピーリングなど、効率的かつセキュアなネットワーク構成を設計
データ連携・移行
データ移行や異なるクラウド間でのデータ連携方法(リアルタイム同期、バッチ処理など)を計画し、適切なツールやサービスを選択
運用・監視設計
複数環境にまたがるシステムを一元的に監視し、障害発生時に迅速に対応できる運用体制を構築
加えて、ビジネス要件を技術仕様に落とし込み、顧客にわかりやすく説明するコミュニケーション力も欠かせません。実際のプロジェクトで設計を経験し、実践的なアーキテクチャ設計能力を身に付けられれば、プロジェクトマネージャーへの道が見えてきます。
最先端のハイブリッドクラウドを実務で学べる「日比谷情報システム」
インフラエンジニアがハイブリッドクラウドのスキルを身に付けるには、実際のプロジェクトで実務経験を積むのが効果的です。日比谷情報システムは金融システムをはじめ、高度なセキュリティと安定稼働を満たすシステムの開発・運用実績が豊富な独立系SIerです。
近年はオンプレミス環境とクラウドの融合、マルチクラウドサービスやクラウドネイティブアプリケーションなど、最先端のシステム開発やインフラ構築にも注力しています。日比谷情報システムでは、社員のスキルアップを支援する研修制度や資格取得支援にも力を入れており、意欲のあるエンジニアが成長できる環境が整っています。
複数のクラウドプラットフォームの知識を深めながら、プライベートクラウドとの連携を実践的に習得できるのも働くメリットのひとつです。今後の企業ITインフラの主流となるクラウドの領域でキャリアを築きたい方は、日比谷情報システムの採用情報をご覧ください。