生成AIの急速な普及は、ITエンジニアのキャリアに大きな変化をもたらしています。「自分のスキルがAIに代替されてしまうのではないか」「上流工程をめざしているが、今後はどのようなスキルが評価されるのだろう」といった不安を抱える現役エンジニアの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、生成AI時代におけるSIerと開発ベンダーの採用動向の変化と、これから求められるスキルや人物像を解説します。キャリアプランニングのヒントとしてお役立てください。
生成AIの普及でSIerと開発ベンダーの採用はどう変わったか
生成AIの普及によりシステム開発の内製化が進むなかで、SIerと開発ベンダーにおけるエンジニアの採用基準も変わりつつあります。エンジニアのAI活用が浸透しており、エンジニア採用時の合否判定にAIの活用経験を用いる企業も増えているようです。
ITエンジニアの採用基準全体が底上げされる中、特に顕著な変化は以下の通りです。
コード中心の採用から「業務理解・要件定義力」重視へシフト
AIがコーディングの一部を担うようになり、これまで評価の中心にあったプログラミングスキル以上に、顧客のビジネスや業務を深く理解し、「何を作るべきか」を定義する要件定義能力が重視されるようになりました。
システム開発の目的を捉え、顧客の課題を解決する本質的な機能を設計できるエンジニアを求める企業が増えているのです。採用の際にプログラミングスキルを重視しない企業は、コミュニケーション力やマンマネジメントのスキルを求める傾向があるようです。
今後の選考においては、顧客との対話を通じて潜在的なニーズを引き出すコミュニケーション能力や、複雑な業務プロセスを整理してシステムに落とし込む設計能力が求められるようになるでしょう。
AI活用レベルによる採用の2極化が進行
技術領域のスキルは2極化が進んでいます。以下のような生成AI活用ができる人材は、選考において加点評価されるケースが多いといわれています。
- タスク自動化・開発支援
- APIのシステム組込み
- AIワークフロー・エージェント設計
- MCPを使った実験や評価
- 独自のLLMの微調整・学習・研究開発
逆に、AIコーディングや情報収集、AIを使った壁打ちができていないエンジニアについては選考時に減点評価する企業が増えています。すでに「GitHub Copilotを使ったコーディングはできて当然」との認識が定着しつつあるのです。
AI時代にSIerと開発ベンダーで求められる4つの必須スキル
生成AI時代にエンジニアとして活躍し続けるためには、技術的スキルや社会人基礎力があることを前提としたうえで、以下の4つのスキルがキャリア形成のうえで重要性を増してきます。
1. 上流工程に関わるためのコミュニケーション力
上流工程では、顧客やチームメンバーとの円滑な意思疎通がプロジェクトの成否を分けます。これからのエンジニアには、相手の意図を正確に汲み取る能力、専門的な内容を分かりやすく説明する能力、そして多様な意見を調整し合意形成へと導く能力が求められます。
相手の反応に臨機応変に対応したり、ノンバーバルサインから相手の意向を汲み取ったりする能力も、現時点ではAIに代替できない資質として重視されるでしょう。
2. 要件定義や業務プロセス理解などのビジネススキル
技術をビジネス課題の解決に結びつけるスキルも求められます。顧客の業務フローを深く理解し、どこに課題があるのかを分析する力、そしてその課題を解決するためのシステム要件を定義する能力は、AI社会で活躍できるエンジニアとして欠かせない要素です。
また、開発したシステムを納品して終わりではなく、顧客のビジネス運用の成果を見届け、運用の効率や次なる改善まで見越した長期的な目線も求められます。
3. 生成AI・クラウド・セキュリティへのキャッチアップ力
技術の進化は止まりません。生成AIはもちろん、その基盤となるクラウド技術や、AI活用に伴う新たなセキュリティリスクなど、常にアンテナを張り、最新の知識を学び続ける姿勢が必須です。
同時に、タスクの自動化や開発支援、ワークフローやエージェント設計など、開発プロセス全体の生産性を高めるためのスキルアップも欠かせません。
4. 品質・セキュリティを担保する判断力
AIの出力を批判的に検証し、責任をもって品質を担保する能力が求められます。
生成AIが作成したコードや設計案を鵜呑みにするのは危険です。アウトプットが品質要件やセキュリティ基準を満たしているか、専門家としてレビューし、リリースの最終的な判断を下すのは人間のエンジニアの重要な役割です。
生成AI時代に評価されるエンジニアの人物像と積むべき経験
生成AI時代のエンジニアには、スキルだけでなく仕事でのスタンスやマインドセットも問われます。
自走して学習を継続できるエンジニア
生成AIの登場でさらに加速したIT業界の変化にキャッチアップするために、自律的に学習し続けるマインドが欠かせません。
会社からの指示を待つのではなく、自らの興味関心に基づいて新しい技術や情報を主体的に学び、自身のスキルセットを常にアップデートし続けられる人物が求められます。
チームで成果を出せる協働力を持つエンジニア
個人のスキルだけに依存せず、チームで成果を出す視点が必要です。AIツールの活用ノウハウや習得した知識をチーム内に共有し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献できる協働力が評価されます。
顧客価値を起点に考えられるエンジニア
特にSIerでは「新しい技術を活用したい」という技術志向よりも「この技術を使って、顧客のどの課題を、どのように解決できるか」と、顧客価値起点で思考できるエンジニアが求められます。
生成AIを単なる作業効率化ツールとして使うだけでなく、既存のプロセスそのものを見直し、より本質的なビジネス改善策を提案できる人材は、組織に欠かせない存在となるでしょう。
意識的に積むべき経験
こうした人物像に近づくために、日々の業務のなかで以下の経験や知見を積むチャンスを探してみてください。
- 小規模でも要件定義・設計などの上流工程に関わる
- AWS・Azure・GCPといったクラウド環境での構築・運用を経験する
- アーキテクチャの理解を深める
- 技術選定に携わる
実装だけでなく、顧客と直接対話し、システムの仕様を決める経験を積むことがキャリアの幅を広げます。たとえ小規模な機能改修であっても、積極的に要件定義や基本設計に関わる機会を見つけ、顧客の課題解決のプロセスを実体験しましょう。
また、技術選定に携わり「なぜこのプログラミング言語やフレームワークを使うのか」「なぜこのシステム構成なのか」といった技術選定の背景や設計思想を理解することも大切です。技術の選定理由を論理的に説明できる力を身に着ければ、生成AI時代におけるエンジニアとしての価値が高まります。
経験を活かして成長をめざせる日比谷情報システム
生成AI活用が進む変化の速い時代において、エンジニアとして着実に成長し長く活躍し続けるためには、要件定義や顧客のビジネス理解、技術選定といった上流工程のスキルが不可欠です。日比谷情報システムには、現役エンジニアが上流工程のスキルを実務で習得できる環境があります。
- 大手企業との直接取引で上流工程に挑戦しやすい
- クラウド・インフラ領域の豊富な実績でAI時代の基盤力を伸ばせる
- 学習支援が充実し、チャレンジをリスペクトする社風
大手企業との直接取引案件が多いため、顧客のビジネス課題に関与し、最上流の工程からプロジェクトに参画するチャンスが豊富です。また、資格取得や外部研修への参加など、社員の学習意欲を積極的にサポートしていることも特徴です。
生成AI時代のキャリアに不安を感じている方、上流工程や新しい技術への挑戦を通じてさらに成長したい方は、日比谷情報システムの採用情報をご覧ください。